ボルドー地方(Bordeaux)はフランスを代表するワインの産地の一つで、ボルドーワインの歴史も古くその一部は世界遺産に登録されています。
ボルドーワインの大きな特徴として挙げられるのが銘柄の格付けで、ソムリエ・ワインエキスパート試験を受ける方は暗記必須です。試験を受けない方でも格付けを知っているとワインショップに並んでいるボルドーワインが分かるようになるので知っていて損はありません!
ボルドーの格付けは別の記事で解説していますのでこちらをご覧ください。また、ワインについてもっと詳しく知りたい方はソムリエ教本や杉山先生の本を読むといいと思います。
また、【アカデミー・デュ・ヴァン】などのワインスクールではワインをテイスティングしながら知識を身につけることができるのでオススメです!
>フランスワインのもう一つの名産地ブルゴーニュの解説はこちら
ボルドー地方の概要
ボルドー地方(Bordeaux)はフランスの南西にあるジロンド県に属しています。ジロンド県の位置が分かるようマップを貼っておきます。
この地方をドルドーニュ川(Dordogne)とガロンヌ川(Garonne)が流れ、途中で合流しジロンド川(Gironde)となり大西洋に繋がります。
気候は海洋性気候で、地質はジロンド川の右岸と左岸で大きく違います。
ボルドー地方は赤ワインのイメージが強いですが、白ワインや甘口の貴腐ワインも作られています。
ブドウの品種
ボルドー地方で栽培されているブドウ(黒・白)の品種を紹介します。
マーカーの引いてある品種は最低限おさえるべき品種だと思います。
ボルドーワインは複数の品種を混ぜて作るのが一般的です。フランス語では、混ぜることをアッサンブラージュ(assemblage)と言います。
栽培面積は約115,000ヘクタールです。
<黒ブドウ>
カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)
メルロー(Merlot)
カベルネ・フラン(Cabernet Franc)
マルベック(Malbec)
プティ・ヴェルド(Petit Verdot)
カルムネール(Carmenère)
5つの生産地区
ボルドー地方の代表的な生産地は5つです。
- メドック、グラーヴ(Médoc, Graves)
- ポムロール、サンテミリオン(Pomerol, Saint-Émilion)
- ソーテルヌ(Sauternes)
- アントゥル・ドゥ・メール(Entre-Deux-Mers)
- コート(Côtes)

メドック、グラーヴ
メドック及びグラーヴは、カベルネ・ソーヴィニヨンを中心に栽培しています。
メドックには1855年に制定されたメドック格付けがあります。
この地区のポイヤックやマルゴーなどには、有名シャトーがいくつもあります。
ワインに詳しくなくても、シャトー・ラ・トゥール(Chateau La Tour)やシャトー・マルゴー(Chateau Margaux)は聞いたことあるという人も多いです。
ポムロール、サンテミリオン
ポムロール、サンテミリオンは、メルローが主体となります。
サンテミリオンは、『サンテミリオン管轄区』として1999年に世界遺産に登録されています。中世から続くワイン畑や歴史的建造物が並ぶ観光名所です。
ポムロールは、ボルドーワインで最も高価なワインであるペトリュス(Pétrus)並びにル・パン(Le Pin)の生産地として知られています。
ソーテルヌ
ソーテルヌは甘口の貴腐ワインが中心です。はちみつに似た黄色をしています。
ソーテルヌの他には、ドイツの『トロッケンベーレンアウスレーゼ』とハンガリーの『トカイ・アスー』が貴腐ワインの3大名産地となっています。
貴腐ワインはブドウの皮をカビ菌に感染させ、組織を破壊することでブドウ内の水分を減し糖度を高めます。
一定の気候条件を満たさないと生育できないため、不作の年もあります。その時はワインを生産しないシャトーもあります。
ソーテルヌで有名な貴腐ワインとして、ルイ・ヴィトングループ傘下のシャトー・ディケム(Chateau d’Yquem)があります。
アントル・ドゥ・メールとコート
アントル・ドゥ・メールとコートは比較的お手頃なボルドー産のワインを生産しています。
アントル・ドゥ・メール(Entre-Deux-Mers)は、直訳すると『二つの海の間』という意味で、海ではないですが二つの川の間に位置しています。(ドルドーニュ川とガロンヌ川)
コートは高域に渡り、点在しています。
各地区のA.O.C.
メドック地区
メドック地区はオー・メドック(Haut-Médoc)とメドック(Médoc)に分けられます。
メドックとオー・メドックの境界線はこの後紹介するサン・テステフ(Saint-Estèphe)という村の少し北になります。
オー・メドック(Haut-Médoc)のオー(Haut)はフランス語で『高い』という意味ですが、実際はメドックの南になります。(北ではないので注意しましょう)
さらに、オー・メドックの中に6つの村A.O.C.があります。
- サン・テステフ(Saint-Estèphe)
- ポイヤック(Pauillac)
- サン・ジュリアン(Saint-Julien)
- リストラ・メドック(Listrac-Médoc)
- ムーリ(Moulis)
- マルゴー(Margaux)
グラーヴ地区
オー・メドック及びボルドー市の南に位置するのがグラーヴ地区です。
このグラーヴ地区には、甘口ワインの生産地であるソーテルヌ(Sauternes)やバルサック(Barsac)も含まれますが、今回は分けます。(ソーテルヌ・バルサックは次の見出しで紹介します)
メドック地区に遅れて、1953年にグラーヴでの格付けが発表されました。
グラーヴ地区のA.O.C.ですが、たった2つしかありません!
- グラーヴ(Graves)
- ぺサック・レオニャン(Pessac-Léognan)
ソーテルヌ地区
ソーテルヌ地区は前述した通り、甘口の貴腐ワインの生産地です。
また、1855年のパリ万博の際にメドック格付けと共にソーテルヌ&バルサック格付け(甘口ワインの格付け)が制定され、今でも変更されることなく続いています。
ソーテルヌ地区のA.O.C.は6つです。
- ソーテルヌ(Sauternes)
- バルサック(Barsac)
- セロン(Cérons)
- カディヤック(Cadillac)
- ルピヤック(Loupiac)
- サント・クロワ・デュ・モン(Sainte-Croix du Mont)
サンテミリオン・ポムロール地区
サンテミリオン・ポムロール地区はドルドーニュ川の右岸にあります。メルロがメインの品種です。
サンテミリオンにも格付けが存在します。他の地区の格付けと異なる点は、10年毎に見直されることです。(詳しい内容はまた次回書きます)
主なA.O.C.は10個です。名前と位置を確認します。
- サンテミリオン(Saint-Émilion)
- サンテミリオン・グラン・クリュ(Saint-Émilion Grand cru)
- サン・ジョルジュ・サンテミリオン(Saint-Georges Saint-Émilion)
- モンターニュ・サンテミリオン(Montagne Saint-Émilion)
- リュサック・サンテミリオン(Lussac Saint-Émilion)
- ピュイスガン・サンテミリオン(Puisseguin Saint-Émilion)
- ポムロール(Pomerol)
- ラランド・ド・ポムロール(Lalande-de-Pomerol)
- フロンサック(Fronsac)
- カノン・フロンサック(Canon Fronsac)
サンテミリオン・グラン・クリュはサンテミリオンA.O.C.の中で特に良質なワインがサンテミリオン・グラン・クリュA.O.C.となります。(グラン・クリュのみが格付けの対象でもあります)
カノン・フロンサックは地図にピン留めできなかったのですが、フロンサックの西に位置します。
コート地区
コート地区は様々なところに点在しています。
主要なA.O.C.は6つありますが、赤ワインのみのA.O.C.もあれば、赤白両方を生産しているところもあります。
- コート・ド・ボルドー(Côtes de Bordeaux)
- カディヤック・コート・ド・ボルドー(Cadillac Côtes de Bordeaux)
- カスティヨン・コート・ド・ボルドー(Castillon Côtes de Bordeaux)
- ブライ・コート・ド・ボルドー(Blaye Côtes de Bordeaux)
- フラン・コート・ド・ボルドー(Francs Côtes de Bordeaux)
- サント・フォワ・コート・ド・ボルドー(Sainte-Foy Côtes de Bordeaux)
①〜③:赤のみ
④:赤、辛口白
⑤⑥:赤、辛口白、甘口白
②〜⑥に属さない赤ワインがコート・ド・ボルドーA.O.C.になります。
アントル・ドゥ・メール地区
最後はアントル・ドゥ・メール地区です。
ガロンヌ川とドルトーニュ川の間に挟まれた地域になります。主なA.O.C.は4つです。
- アントル・ドゥ・メール(Entre-Deux-Mers)
- アントル・ドゥ・メール・オー・ブノージュ(Entre-Deux-Mers Haut-Benauge)
- ボルドー・オー・ブノージュ(Bordeaux Haut-Benauge)
- グラーヴ・ド・ヴェイル(Graves-de-Vayres)
①②:辛口白のみ
③:辛口白、甘口白
④:赤、辛口白、甘口白<
ヴェイルとオー・ブノージュの地図を載せておきます。
オー・ブノージュはアルビの周辺に広がる地域になります。
ここまでがボルドー地方のA.O.C.の説明になります。
終わりに
ボルドーワインの値段ですが、1,000円前後から10万円を超えるものまであります。特に有名シャトーの当たり年は値段が高くなります。
ボルドーは数えきれないほど銘柄があります。予算はもちろんですが、様々な産地や品種の配合を試してその中からお気に入りを見つけるのが良いと思います。(Amazonや楽天のラインナップも豊富です)
筆者はサンテミリオンのChâteau Simard 2007あたりが好みです。